企業の従業員の方が一日の大半をすごすオフィスで被災する可能性は少なくありません。オフィスの防災は、「自助」の意識を持って、従業員自ら取り組むことが必要です。オフィスで働くひとりひとりが防災の取り組みを積み重ねていくことは、企業全体の防災につながります。オフィスで机の周囲を見回して、気づいたことから始めてみましょう。
事務所の安全対策
♦︎パソコンの転倒防止とデータのバックアップ
オフィスの防災で、比較的簡単に、すぐ取り組めるもののひとつが「パソコンの転倒防止」です。転倒防止ベルトで机に固定したり、粘着マットを使うなど、早速対策を講じておきましょう。さらに、パソコンの固定とあわせて、データやシステムのバックアップも定期的かつ頻繁に行うようにしましょう。重要なデータ等は、遠隔地でのバックアップも有効な手段です。
♦︎避難経路を確保
出口や廊下、階段等の避難経路に物が置かれていると、避難の障害になります。例えば、2001年に東京・新宿歌舞伎町で発生した雑居ビル火災は、避難路となるはずの階段が各フロアの物置代わりに使われ、荷物でふさがれていたため、44人の死亡者を出す惨事となりました。日頃からオフィスの整理整頓に努めることも大事な防災対策です。
♦︎オフィス家具の固定
建物に被害がない場合でも、オフィス家具類の転倒・落下・移動が発生します。まず身の回りの什器・備品から、耐震確認をはじめてみましょう。オフィスにある背の高い大型キャビネットは、壁等に確実に固定し、コピー機等の事務機器や店舗用の機械設備も、地震で床を滑ったりしないように対策を講じましょう。ガラス飛散防止や家具扉に止め金を付けるなども活用できるでしょう。
♦︎危険物の安全確認と消化器の準備
灯油や塗料の入った容器の転倒・落下防止、火を使用する設備の安全確認を行いましょう。地震の際は、まず身の安全を図り、揺れがおさまってから消火にあたります。屋内消火栓やスプリンクラー設備が破損する場合もあります。職場ごとに消火器等で初期消火が出来るように準備・訓練しておくことが必要です。
ライフラインの停止や避難への備え
♦︎非常用物品や救出用資器材等を備蓄
飲料水、食料、担架や工具等の救出用資器材、救急セットや医薬品などを準備しましょう。取り出しやすく、耐震上問題がない場所に保管し、定期的な点検も行いましょう。
水や食料の備蓄は、地震による断水などに備えて、3日分程度。飲料水は、一人あたり一日3リットルが目安です。
♦︎帰宅困難者対策
自宅までの距離が20km以上の人は帰宅困難と想定されています。各自が、待機後の徒歩帰宅に備え、簡易食料や運動靴、帰宅経路の確認等の準備を行っておくことも大切です。
防災知識を身につける
♦︎防災教育・防災訓練の実施
防災教育は、災害時の企業の対策計画や従業員全体の行動基準などを理解するための研修です。
♦︎周辺企業や地域住民との連携
企業も地域コミュニティーの一員です。災害時には、被害が広範囲に及ぶため、周辺企業や住民との「共助」が重要となります。機会があれば、地域の防災訓練へ参加しましょう。いざという時の周辺地域との連携・協力活動にも役立ちます。
安否情報の確認方法
♦︎任務分担を決める
日頃の防災と、地震等の災害発生時の任務分担をしましょう。発災時の任務分担は、責任者であるリーダー、初期消火、情報連絡、避難誘導、救出・救護等、「誰が何をするのか」を明確にし、不測の事態にも対応できる柔軟な組織づくりをすることが重要です。
♦︎情報収集・伝達方法を確認
被害状況の把握、情報の収集、伝達のため、複数の方法を考えておくことが必要です。ラジオ、テレビ、インターネットなどで正しい情報を入手できるようにしておきましょう。
♦︎安否確認方法を検討する
外出先で被災した場合の会社との連絡方法を確認しておきましょう。また、家族とも、事前にお互いの安否確認方法について話し合っておくことが必要です。安否確認手段も、状況に応じた対応ができるように複数確保しておきましょう。電話、メールのほか、「災害用伝言ダイヤル(171)」、携帯電話やPHP等による「災害用伝言板」、インターネットによる「災害用ブロードバンド伝言板(web171)」などがあります。
※参考:内閣府ホームページ