人間の半分以上は水分
人間のからだの約60%は水分です。例えば、体重約60kgの成人男性の場合、約36kgが水分となります。人間は通常、尿や便の排泄、消化管での消化吸収によって、1日2.5Lの水分が失われています。よって、体内水分量を保つには、体内で組成される水分を除けば、約2.2Lの水分を食事や水分補給から摂取しなければなりません。
「のどが渇いた」という自覚がある時にはすでに脱水が始まっていると言えます。喉の渇きを自覚する前に細めに水分を摂取しましょう。特に、入浴中や就寝中にはたくさん汗をかくので、入浴後、起床時にはコップ1杯程度の水分を摂取する事が大切です。
その際、砂糖や塩分などの濃度が高いと、吸収までの時間が長くなる点に注意が必要です。また、アルコールや多量のカフェインを含む飲料は、尿の量を増やし体内の水分を排泄してしまうので、水分補給としては適しません。なお、腎臓、心臓等の疾患の治療中で、医師に水分の摂取について指示されている場合は、この指示に従う必要があります。
冬の水分補給
風邪と水分補給
寒くなってくると、至るところで風邪やインフルエンザ、胃腸炎などにかかっている人をみかけるようになります。では、なぜ冬にそれらの感染症が流行するのでしょうか。
理由は、空気が乾燥しているからです。風邪やインフルエンザの原因となるウイルスは、乾燥した状態で活発に活動します。反対に湿度50%以上になると活動が急激に低下します。
よって、風邪対策の王道である手洗い、うがいに加えて「水分補給」も大事な予防策のひとつになります。水分補給はのどや鼻の粘膜をうるおしてウイルスの侵入を防ぐと同時に、侵入したウイルスを痰や鼻水によって体外に排出する作用を助けます。
脳血管疾患、循環器疾患と水分補給
寒くなってくると脳卒中などの脳血管疾患や、心臓血管疾患などの発症リスクが上昇します。これは、冬になって気温が下がったということも要因ではありますが、水分摂取量も大きな要因の1つです。冬はのどの渇きを自覚しにくいことや、「トイレが近くなるからあまり飲まないでおこう」という気持ちが働いて、必然と水分摂取量が少なくなります。水分摂取量が低下するということは、血液中の水分量も減り、血液の粘度があがる。つまり、血液がドロドロの状態になります。ドロドロの血液が流れる事によって血管が詰まりやすくなり、その結果として脳卒中や心筋梗塞などの重篤な疾患のリスクが上昇するのです。
アルコールと水分補給
この時期、お正月の不摂生に加え、新年会などで飲酒の機会が多くなります。お酒を飲むとのどが乾くことは多くの方が経験されていると思いますが、アルコールには利尿作用があるため、飲酒量が多いとその分、尿として排泄されてしまい、結果として体は脱水に近い状態となります。アルコールを飲んだら意識的に水分を摂取して、脱水症状を防ぎましょう。また日本酒造組合中央会では、悪酔いをしないとして飲酒の合間に水分を摂取する「和らぎ水」を勧めています。飲酒をしたら水分摂取を忘れないようにしましょう。
〜水を一気に飲んでも意味がない!?〜
胃が一度に吸収できる水分量は約200~250mlです。それ以上たくさんの水分を一度に摂取しても効率よく体内へ吸収されません。約200~250mlの目安としてはコップ1杯分の量となります。1日の水分必要量に換算すると、6~8杯程度の水分を何回かに分けて飲む必要があります。1日の生活の中でも起床後や入浴前、就寝前など、水分が失われるような時の前後には時間を決めて飲むのも1つです。また、飲む時の温度は、冷たすぎると逆に吸収を悪くしてしまうため、10分程度常温に戻してから飲むようにしましょう。スポーツドリンクなども、糖分を含んでいるので、日常的な水分補給には向いていません。